第9章 英雄の後ろ姿
Side轟焦凍
緑谷のメールの場所に向かった時、飯田と緑谷と1人のプロヒーローとステイン、そして、なぜか、血だらけで倒れている安藤が居た。
「なんで安藤がいるんだ!?」
「わかんない!けど、考えてる暇ないよ!」
なんとかステインを倒し終わった時も、安藤は倒れたままだった。
「こいつ……」
「急がなきゃ、血、出過ぎだよ!早く何とかしないと!」
安藤は、真っ青な顔で倒れている。
飯田を助けに1人で突っ込んだのかこいつは。勝機もない癖に、自分が弱いってわかってるだろ?なのに、突っ込んだのかよ。
変なやつ。
「ステインの動きが少し遅かったの。何でなんだろう。何かに迷っていたみたいな。」
「多分……安藤くんのお陰だ。」
「え?」
「安藤くんはステインと会話をしていたんだ。ほとんど一方的に話していたが。」
「会話?」
「あぁ。きっとそれが、ステインの心を揺らし、動揺したんだろうな。」
「安藤……。」
体育祭の時、こいつは予選敗退だった。誰よりも怪我をして、ボロボロだったのに、最後までゴールに向かっていた。弱いくせに、無茶をするやつ、そういう認識だった。
安藤をおぶって歩いている時、
「ごめん……ね……。お父……さん。」
と譫言を発していた。
「安藤?起きたのか?」
返事はなく、また眠りについていた。こいつの事は、本当に分からない。
背中に感じる微かな温もりは、今にも消えてしまいそうに、儚く、危ういものだった。