第8章 〈番外編〉ヒヨコをプロデュース
「はぁ…。」
「どうした安藤?」
ある日の午後、右斜め後ろの席で、安藤が盛大なため息を付いていた。
安藤は、最近転入してきたクラスメートで個性を誰にも知らせていない異例な存在だ。
「わひっ!き、切島くん……。」
安藤は、酷く驚いたように顔をあげた。
わひて……。安藤は、いつもオドオドしてて、見てて心配になる。
「ため息なんてついてたら幸せ逃げてくんだぜ!なんか悩みか?言ってみ!」
「……あぅ……うーん……じゃあ、お言葉に甘えて…。その、すっごくお恥ずかしい悩みなんだけど、あのね、」
顔を真っ赤にしながら言おうとしてくれている。よほど切羽詰まってたんだろう。多分、いつもの安藤だったら、『えぇ!いいよ!申し訳ないし!』ってなかんじだろ。ぜんっぜん元気ないし、ほんとに大丈夫か?
「私、得意なこと一つもないなぁって……。」