第7章 敗けて勝ってその後で
「指名が来たって時点で結果出せなかったわけでは無いだろ。お前は、逃げなかった。この、逃げなかったっていう経験はきっと将来役に立つ。」
「…にげ、なかった……。」
なんと言えばいいのか分からなくって先生の言葉を反復するだけになる。
本当はなんども逃げそうになった。その度にみんなの顔が浮かんで。
「よく……がんばった。」
「っ……!」
先生が頑張ったって、褒めてくれた!!こんなに嬉しいことがあるだろうか。
涙が溢れそうになるのを必死で堪える。私、頑張れたんだ。
「うぇぇっ……」
「なんですぐ泣くかね」
相澤先生のいつもの呆れたような声がする。
急いで涙を拭い、顔をあげて相澤先生の目をじっと見る。
そして、にぃっと無理矢理笑顔をつくった。
「泣いてません!!私、がんばります!」
「ん、それ聞けて安心したわ。」
「あっ、あと、コスチューム無いのお前だけだから、明日デザイン提出しろよ。」
「えっ、ええぇええ!!明日!?」
なんだか上げて落とされた感じ……?いやいや、十合目から七合目に落とされたぐらい。そんなのへっちゃらだ。
その日は急いで帰り、タイムセールに向かい、その後家でみんなと一緒にコスチュームのデザインを考えた。
帰るときに天哉くんと出会った。天哉くんの目を見たら朝よりずっと苦しそうで、なんだか、胸が痛かった。なんでだろう。