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【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】

第4章 roasting






「あーあ、攫われちまったなぁ、家康?」



「さぁ、何のことですか。

それより早く戻りますよ」




「歩くのが早いな、家康」



「何を焦って居るんだろうな…ククッ」






兄貴分達にからかわれながら、家康は馬屋への道を急ぐ。
何のことかと惚けてはみるが、焦っているのは事実。





「信長様は、千花様にはとてもお優しいですね。


あの様なお顔、初めて見たように思います」





言われなくても分かってる、なんて。
三成の言葉に内心毒づきながら、奥歯をぎり、と噛み締める。
信長様とは長年の付き合いだが…こと女には付け込まれ無いようにと、今まであの様な顔は見せなかった。





恐らく彼にとっても千花は特別なのだ、その種類が自分と同じかはまだ分からない、けれど…





彼がその気になったら自分に勝ち目はあるのだろうか、と漠然とした不安。
男としても武将としても、彼の方が幾つも格上だと弁えている…今は、未だ。






千花の心に近付いた、と思う度、ふわり、と離れていくような危うさに翻弄される。
形で周りに示したくて簪を着けさせたりして、自分の必死さがみっともなく思えてくる。




――それでも、これだけは譲りたくない。






漸く辿り着いた馬の背上、手綱を強く握り、決意も新たに城へと駆け出す。
一刻も早く、千花の元へ――
逸る気持ちそのままに、馬の腹に蹴り入れる。
その姿は、東海一の弓取の名に相応しく、勇ましく風を切った。



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