【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第3章 aromatic
「うーーーーーーん…」
雲一つ無い昼下がり。
そんな良い天気にも関わらず、私は手摺に凭れて、空を見上げ溜息をついていた。
秋の高い空は、吸い込まれそうに青い。
城の上の方まで上ってくると、遥か下には城下町。
高い建物がなく、遠くの山々まで見渡せる…あてがわれたこの部屋を、私はとても気に入っていた。
現代でこんな眺望の部屋、探しても無いんだろうな――なんて。
元いた世に思いを馳せるも、帰るつもりなんて最早消え去っていた。
ため息の原因のかの人は、この景色のどの辺りに居るのだろう。
ここ暫くは他国との諍いも無く、城下の整備に武将達はてんてこ舞いだ。
家康は、民の生活を安定させる為の施策を担っているらしく、よく市中見回りと言って城下に出ている。
たまに連れて行ってくれたりもするけど、最近は今まで整備出来ていなかった少し遠くの村に足を伸ばすことが多いらしい。
――自分に出来ることは無いのかな、欲を言えば、彼の為になるような。
持て余した気持ちをぶつける勇気と、タイミングがなかなか湧いてこない。
先日のやりとりで嫌われてはいない、と分かったとは言え――流石に好きだ、と告げるまでの自信は持てていなかった。
そこに、風に乗ってゴロゴロという音が聞こえてくた。
音のする方を見下ろすと、大きな台車に積まれた農作物の山が運ばれて、城に入っていく。
秋らしく、色とりどりの野菜や果物が並んでいる…政宗が喜びそうだな、なんて思いながらそれらを眺めていると、大きな橙色の南瓜が目に止まる――
――かぼちゃ…!!
思い立ったが吉日、とばかりに。
私は襷を引っつかむと、厨に向かって駆け出していた。