第1章 わたしの彼氏
それがわたしの彼氏の名前。
日本有数の名家、赤司家の1人息子。
強豪帝光中学校バスケットボール部のキャプテン。
成績はオール5、皆勤賞。
生徒会役員にも選ばれ、そのトップである生徒会長を務めている。
品行方正、成績優秀、文武両道。
まさしく完璧で隙がない。
「千春、どうだった?」
「前回より1回少ない」
「そうか…。
すまない、もう1度頼む」
「分かった」
今は部活の休憩時間であり、赤司くんの30秒間の反復横跳び回数を計測している。
体力テストの基準からすればすでに満点の結果なのだが、赤司くんは納得がいかないみたい。
わたしは男子バスケ部のマネージャーをしている。
さつきちゃんには敵わないけど、わたしはわたしの出来る仕事を精一杯やるだけ。
「あと2、3回回数を増やしたいな…。
その為にはどうするべきか…」
「んーとね、あと5cmくらい重心を落としたらどうかな?赤司くん」
「桃井…そうか、試してみる。ありがとう」
「ううん、良いの。
頑張ってね」
「あぁ。
千春、計測を頼む」
「う、うん。分かった」
分かってはいたけど、こう実力の差を見せつけられるとへこむな…。
「千春?」
「あ、ご、ごめん!
じゃあ始めるね?」
「あぁ」
「どうだ?」
「さっきより2回、記録が上がったよ」
「そうか…!
流石は桃井だな」
「うん、凄いよね、さつきちゃんは」
「そ、そんなことないよ!
頑張ったのは赤司くんだから、凄いのは赤司くんだよ!」
「ありがとう」
「千春ちーん、ちょっとい〜?」
「ごめん、ちょっと行って来るね」
「あぁ」
「行ってらっしゃい、千春ちゃん」
紫原くんに呼ばれ、そちらに向かう。
赤司くんは何事もなかったかのようにさつきちゃんと改善点について話している。
そうだよね、わたしの一方的な焼きもちだから。
大丈夫。
さつきちゃんが凄いのも、赤司くんが人気者なのも知ってるから。
いつものことだから、仕方ない。