Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第19章 贈り物
綺麗に足を揃え、背筋をピンと伸ばし、緊張した面持ちでソファに身を預けていたエミリは、瞬きを繰り返しながら向かい側に座るダリス・ザックレー総統と向き合っていた。
「おい、肩の力を抜け。顔が強ばってんぞ」
「ね、年中無愛想な兵長に言われたくない、です……」
「ほう、言うようになったじゃねぇか」
リヴァイに対して遠慮が無くなってきたエミリのその言葉は、二人の距離がまた少し近づいたことを表していた。
それを改めて感じ取ったリヴァイは、心做しかいつもと比べて機嫌が良い。眉間の皺も少ないようだ。
「リヴァイの言う通りだ。そう身構えることは無い」
「は、はは……はい!!」
再びザックレーに声をかけられたエミリは、またピンと背筋を伸ばす。
その様子にやれやれと溜息を吐くリヴァイだが、初対面の、しかも相手が三兵団を纏めている総統となれば、エミリが緊張してしまうのも無理はない。
何故、エミリがザックレーとこうして顔を合わせているのか。それは、先日のファティマの話が通ったからである。
薬剤師としてエミリを弟子に勧誘しただけでなく、エミリのためにと調査兵団の敷地に薬草園を造るという話となった。
妻の要望を聞いたザックレーは、薬草園の創設を許可したのだ。
その条件として、ファティマが認めたエミリという兵士と一度会ってみたいという、何とも簡単な交換条件を提示したため、こうして面会することとなったのである。
「で、どうかしら? 私が選んだ生徒は……」
ザックレーの隣に腰を下ろし、優雅にティーカップに口を付けているのはファティマ。
会いたいと言うから連れてきたというのに、さっきから何も言わずにずっとエミリを眺め、観察しているだけの夫に、ファティマは呆れたように言った。
「ふむ……まあ、彼女とは会ったばかりだ。特に大きな評価はまだ言えんが……」
じっとエミリの目を見つめ、ザックレーは観察を続ける。
対してエミリは、早く終わらないかと泣きそうな表情で座っていた。