Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第3章 入団
「いきなりどうした」
「この子の特技、見てよコレ!!」
ハンジは、興奮気味にエミリの資料をエルヴィンに手渡す。一体何が書いているのかと資料に目を通すと、エルヴィンは興味深そうに目を細めた。
「これは初めて見るな」
「でしょ!?」
「何が書いてあったんだ?」
いつも騒がしいハンジだけでなく、エルヴィンまでもが目をつけた程の特技とは一体何なのか。黙って話を聞いていたミケも興味を示す。
「エミリ、薬の調合が得意なんだって!!」
「あ? 薬?」
「ということは、やはりエミリは例の医者の娘ということか」
「その可能性は高いな」
「いいねぇ……滾るね〜〜!! 薬草に詳しいってことは、研究にも慣れてるってことだろう!? 私の班に入れて、一緒に巨人のこと研究したいなあ!!」
頬を染めながら自分の世界に入り込んでしまったハンジだが、エルヴィン達は無視して話を進めた。
ハンジが騒ぐのはいつもの事だ。しかし、相手をしていてはこちらが疲れるだけ。放ったらかしにしているのが一番いい。
「ん?」
「エミリ、どうしたの?」
「くしゅん!」
「うお! 何だお前!! いきなりくしゃみかよ!!」
話を止めたと思いきや、突然くしゃみをするエミリにオルオがビクリと肩をあげる。
「な、何か……寒気が……」
ブルブルと少し震えながら、腕を摩るエミリにフィデリオは含み笑いをする。
「誰かに噂されてんじゃねーの?」
「何よそれ……」
「でも、一回くしゃみって、誰かに褒められてるって言うよね」
「じゃあ何で寒気がするのよ……」
くしゃみをすると誰かに噂をされている、というジンクスは有名だ。『一に褒められ二に憎まれ、三に惚れられ四に風邪をひく』とよく言われている。
エミリは一回くしゃみなため、誰かに褒められているということになる。が、それが変人の集まりである調査兵団の中でも、群を抜いた変人と言われているハンジに一目置かれているなど、エミリは知る由もなかった。