第2章 首吊り死体のジレンマ
暗闇から伸びてきた彼の手は、まるで彫刻のように美しく滑らかで、そしてひどく冷たい。私の顔から徐々に熱が奪われていく。それを感じながら、彼の手の上に自分の手を重ねる。覆いきれなくて、彼は男であり私は女である事実を改めて認識する。
やがて彼は、彼の唇を私に寄せる。この唇もまた美しいもので、私はいつも遠くから見つめては見惚れてしまうのであるが、いまは与えられる感触、これから飲み込まれる快楽に身を委ねて目を瞑る。
情事が行われようとするこの部屋には愛はない。
私はそう思っている。そう思わないといけないと感じている。
この部屋で何度も身体を重ねてきた。私と彼はそれだけの関係だ。所謂セックスフレンドなのかもしれないが、その割り切った関係であったならば、私はずっとずっと救われると思う。一方的に私が呼び出されて行為に至るだけ。そんなこの関係は、一体なんと呼ぶのだろう。
するすると、服が脱がされていく。目を開けば、私のお気に入りである小花柄のワンピースがあっけなく床へと捨てられたところだった。私と己の身に纏ったものを全部剥がしてから、彼はゆっくりと息を吐いて、されるがままの私をながめた。
それから身体中に落とされるキスは、この関係が始まったときには嫌悪しか感じなかった。ただ彼の欲の掃き溜めとなる。それを強引に受け入れさせられた。涙が出るほど嫌だった愛撫が、いまではくすぐったく、泣きたくなるくらいに感じてしまっている。私が吐息を漏らすと、彼はキスをくれた。