• テキストサイズ

【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第2章 言葉よりも、雄弁に


3日間の準備で、純は現在の自分が出来る最高のパフォーマンスを目指して、色々模索を続けてきた。
勿論、その間勇利へのEXの振付確認もしていたが、ピーテルに来たばかりの頃よりも時間の使い方を細分化させ、勇利の為と自分の為の時間の区別を明確につけた。
元々頭の回転の早い純なので、一度火が点けば持ち前の集中力も合わせて、そうした時間配分等は容易く行う事が出来るのだ。
(これまでの僕は、「もう現役やない、勇利のサポートをせな」て気持ちばかりが空回って、肝心な事が欠けてた。僕が勇利に一番伝えたいのは、僕の持っとるスケートの技術やその他全て。その為には、言葉よりも雄弁に伝えられる方法があるのを、僕は自分の知識に偏り過ぎて失念してたんや)
ストールを羽織り直しながら、リンクサイドのヴィクトルに目で合図を送ると、曲がかかるのを待つ。
(勇利、よう見とき。何で僕が女性向けの演目の『SAYURI』を自分のモノに出来たのか。君の『エロス』を借りて、存分に教えたるわ)
ギターの前奏が始まると、純は肩越しに視線を送るような動きをする。
(色男に群がるのは、器量だけは街でも選りすぐりの女達…引く手数多の色男は、やがて1人の女の腰を抱く。でも…『そんなカスな女はおやめ』)
それまで何処か遠くを眺めていた純の黒い瞳に、妖しさを孕んだ光が宿る。
(『──私では、どう?』)
次いで、バサリと手で払うようにストールを脱ぎ捨てると、自分の身体を見せつけるようにして滑り始めた。

「肩と背中の使い方が綺麗よね。カツキよりもなで肩なせいかしら、男性なのに女性的な動きがとても馴染んでると思うわ」
「スピードはカツキに劣るが、スケートひと蹴りの伸びが凄い。あれはきちんと基礎を踏まえてるからこそ、出来る芸当だ」
ミラの言葉に、ギオルギーも相槌を打ちながらリンクの純を見つめる。
やがて、エッジとスピードに乗ったイーグルから最初のジャンプの体勢に入った純は、無事にアクセルジャンプを着氷させた後で、両手をかざしてみせる。
「イーグルからの3Aとか、マジかよ…!」
純の本格的なスケートを目の当たりにしたユーリは、思わず無防備な声を上げた。
/ 23ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp