第1章 大嫌いな上司
朝食をすませると、部長は素早く、片付けを始めた。
私はあたふたしていると「先に用意して会社行け。俺と一緒に出勤したら変な風に思われる。」と悪戯な笑みで私にいった。
この人本当、なんなんだろう。
私はそう思いながら、洗面所を借り化粧をして、部長にかるく挨拶をして部長の家を出た。
慌てて出てあとから気づいたのだが、ここどこだろう。
部長の家にどうやってきたか覚えていなかった私はどこの地区なのかもさっぱりわからなかった。
フラフラと歩いていると後ろの方から黒い自動車が走ってきた。
慌てて道の端に寄ると、その車は私のいたところで止まった。
運転席には部長の姿があった。
「あの、私何か忘れ物でもしましたか?」
そう問うと
「道もわからず家出てったから道に迷ってないか見に来てやったんだ。迷ってるなら駅まで送る。乗れ。」
そう不器用に自分の隣の席を指差した。
私は少し不満に思いながらも車に乗せてもらった。
正直道に迷っていたことは事実だ。
だからこそ否定ができない。
何もしゃべらず、車で数分揺られると駅に着いた。
すると部長は丁寧にも何時の電車か、何番ホームなのかを教えてくれた。
けれど部長は車通勤だから日常的には使わないはずなのに、[何故だろう]
不思議に思うも時間が押していたので私はホームへと急いだ。
予定どうりの電車に乗りガタンゴトンと揺られ、勤める会社の最寄り駅へと着く。
会社に着くともうすでに同じ部署の何人かの人が出勤していた。
「部長遅いですね、今日」
隣のデスクの子がそういう。
確かに部長はいつもならうちの部署では一番最初に出勤している。
おかしく思われてもしょうがない。
けれど心当たりのある私は
「部長でもたまには遅く来る日くらいあるんじゃないですかねー。人ですし。」
といったがだいたい原因は分かっている。
昨晩の私の泥酔が原因だ。
いくらいつもの残業に腹が立っても迷惑かけすぎたな。
何か、お詫びに贈ろう。
そう心の底で思いながら私は仕事を始めた。
[そういえば昨日、莉架と別れたあと部長私のこと日向って呼んでたな。]