第3章 上司のしたかったこと
しばらくして、俺は調理を終え隣接していたリビングへと足を運んだ。
日向の部屋はOLの一人暮らしには少し広い気がする部屋で、寝室が別であった。
リビングまで料理を運んだあと、寝室だと思われる部屋の扉をノックした。
「料理、できたから一回起きろ。」
どれだけ考えても俺のかける言葉は無愛想で、自分で言っておきながら何度も頭を悩まされる。
ガチャと扉が開いて、いつもの感じではなく少し元気がなさげな日向。
「ありがとうございます…」
そう言いながらフラフラとやっとの思いで歩いている姿があった。
リビングにつくと日向はうどんが置いてある机の前に座り、黙々とうどんを食べ出す。
俺はそこから少し離れたところにある椅子に腰かけていた。
「…部長、こんなことしてていいんですか。」
うつむきながら日向は俺に問いかけた。
「こんなことってなんだ。」
「好きでもない部下の世話なんかしてていいんですかって言ってるんですよ。こんな美味しいもの作れるんだったら、もう少し脈のある人とかにした方がいいんじゃないですか。」
日向は俺の気持ちも知らずにそんなことを言う。
「別にいいだろ、俺がどうしようと…莉架さんからそれ、預かった。ここおいておく。」
俺はそう言って部屋を出ようとした。
そのとき、手首を捕まれる。
振り向くと日向は俺に
「部長のやり方はあんまり好きじゃないですけど、助かりました。ありがとうございました。」
と言って俺の手首を離した。
俺はそのまま日向の部屋を出た。
そのままエスカレーターまで歩く。
その時誰かとぶつかった。
「すみません」
「いえ、こちらこそ」
ぶつかったのは同じ年くらいの男だった。
愛想が良く、ぶつかってすぐに俺に謝った。
俺もあんなやつだったら日向ともっといいコミュニケーションが取れたのか?
そう思った。