第18章 大好きな職場。
裕Side
「由架さーん、ちょっといいですか?」
部下のそんな声がオフィスへと響く。
けれど、何故か由架の返答はなかった。
おかしいなと思った俺は振り替える。
俺の個室のガラス越しに映ったのはぼーっとしながら黙々とキーボードをうつ由架だった。
莉架さんと会ったあの日くらいからだろうか。
由架の様子がおかしい。
けれど、何故彼女がそこまで気にするのかわからなかった。
家に帰っても空元気。
職場ではこれ。
さすがにこれは[旦那]としても[上司]としても放っておけない。
俺は昼休み、由架を呼び出した。
といっても俺は相変わらず、昼休みも仕事をしている。
だからそんな社外に出てランチ何てこともするわけもなく、呼んだのは会社の休憩室だった。
「本部長、どうしたんですか。」
そう声をかけられ、俺は言う。
「呼び出された理由、少しは勘づいているんじゃないのか。」
すると彼女は俯いた。
「勘づくってなんのことですか。」
職場ではあくまでも[上司]と[部下]。
それは籍を入れても変わらない。
「…書類の書き損じ、チェックの見逃し、作業効率の低下、おまけに部下の呼び掛けにも気づかない。それをこの俺が放っておくと思うか。」
そう言うと由架はそこにあった簡易の椅子に座り込む。
「気づいていないんだとしたら、部長としてかなり不味いことくらい…わかるよな。」
俺だってこんなこと言いたくない。
けど仕事は仕事だ。
ましてや、彼女は管理職。
いくら自分のパートナーだからといって甘やかす訳にはいかない。
「…今言われたので気づいたなら、午後からは気を引き閉めていけ。俺は仕事に戻る。」
そんな冷たいことをいい放って休憩室をでた。