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novel

第5章 さようならは持続する





私は握りしめていた携帯電話をソファへ放り投げた。クッションの上へ落ちてバウンドし、ぼとりと床に落ちた。窓から差し込む夕日の光できらりと光る。
一瞬、しまった、と感じたような気がする。携帯電話を投げつけすぎて壊れたと、あのひとは言っていた。それを聞いたときは馬鹿だなあくらいにしか思わなかったが、もしかしたら私もいま壊したかもしれない。そういった意味合いの、しまった、だったのだろう。けれど、私の脳は他人事のように処理した。

そんなことはどうだっていいのだ。
床の携帯電話を視界に入れないようにして、ソファになだれ込む。先ほどのクッションに顔を埋めて深く呼吸をすれば、ほら落ち着いた。

いまの私をたとえるなら、空き瓶である。
そして私に向けられる言葉は瓶に入ったビードロの玉のようだ。

ヴヴヴ。
今日何度目かのバイブレーションが低く響いた。床を伝って私の体にまで響く。鬱陶しい。重い脚を持ち上げてソファに登りきった。そのままコンパクトにたたむ。
ディスプレイを見ずとも内容は予測出来る。あのひと、しんじゃったって? あんただいじょうぶ? みたいなメールや電話。昼間からそればかりで、もう聞き飽きたので放っておいてほしい。

ころころ、ころころ。
虚しさだけが転がって私を焦がしていく。

あのひとの「さようなら」は、「またね」だった。


fin
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