第9章 日常
個室に入ってトリオン体になる。
中に設置されたPC画面に『模擬戦の申し込みが来ています』と表示されている。承諾のボタンを押し、自動的にフィールドへ転送される。
そこは至って普通の市街地だった。
数メートル先に太刀川さんが構えて立っている。俺は息を整え、弧月の柄に手を添える。
【個人ランク戦5本勝負、開始】
アナウンスがなると同時に2人の距離が一気に詰まり、弧月同士が激しくぶつかる。
流石、忍田さんの弟子だけあって受け太刀や受け流しが上手い。口角が自然と上がる。昨日、忍田さんにやった事と同じ事を試す。
一旦離れてもう1度踏み込み、左下から振り上げる。が太刀川さんはそれを受けずに跳躍して躱す。
着地した太刀川さんが不敵な笑みを浮かべる。SEを使わなくてもわかるくらい、この戦闘を楽しんでいるのが伝わってくる。
その後も激しい攻防は続き、双方傷ひとつ負っていない。
1戦目は時間切れで引き分けになった。
続く2戦目
最初に動いたのは太刀川さんだった。俺はその場から動かずに、相手の動きを見極めるため、シールドを張って防ぎ続ける。
普通のトリオン量なら砕けているが、俺のトリオンは人の何倍も多いからそう簡単には砕けない。
太「どうした、藤咲。もうへばったのか?」
俺「そんなわけないじゃないですか。...攻めるのはこれからですよ」
言い終わるよりも速く太刀川さんの懐に入り込み、横薙ぎにした。防ぐ間もなく太刀川さんが緊急脱出する。
3戦目、4戦目も太刀川さんは何も出来ずに緊急脱出する。
これで太刀川さんの勝ちはなくなった。
5戦目
今度は真っ直ぐ進まず、その場で旋空を放つ。太刀川さんは避ける為に跳躍するが、それじゃ逃げられない。
跳躍した太刀川さんに向けて、何度も旋空を放つ。最初は弧月で受けていたが、圧倒的なトリオン量の差で弧月が折れ、太刀川さんが真っ二つになって終わった。
最終スコア...太刀川0―4藤咲 1引き分け
個室の緊急脱出用ベッドで座っていると、太刀川さんから通信が入った。
太【お前すっげぇ強いな!何かやってんのか!?】
俺【何もやってないですよ。ただ、太刀川さんの太刀筋が忍田さんに似てたのでやりやすかっただけです】
太【忍田さんとやったことあんのか?】
俺【はい。最近だと昨日やりました】
そう言うと、俺も相手してもらいてぇと呟く声が聞こえた。
