第16章 捕虜
1本目
開始の合図と共にヒュースが蝶の盾を展開する。ザァァァと音を立てて広がる結晶は、レイジさん曰く磁力を帯びているらしく、身体につくと物凄い力で引っ張られるそうだ。
まぁ、当たる前に避ければいいだけの話。俺は片方に孤月を出して、もう片方に変化弾を浮かべる。
俺「変化弾」
12×12×12=1728分割された変化弾が、複雑な軌道を描いてヒュースへと飛ぶ。圧倒的なキューブの多さと威力の高さで、致命傷とまでは行かずとも被弾する。
ヒュ「くっ...!」
俺「悪ぃな。模擬戦と言えど手を抜く訳には行かねぇんだ」
ヒュ「それはこちらも同じだ!」
ヒュースが結晶を集め、刀のようにして向かって来る。刀なら俺の十八番だ。孤月を構えてヒュースの刀を防ぐ。防いだ刀を押し返し勢いそのままで振り下ろすと、ヒュースの左肩が落ちた。更に追撃を加え、四肢を切り落として戦闘不能にして1本目が終了した。
2本目
ヒュースが再び蝶の盾を展開し、数本の触手の様にうねらせる。
ヒュ「次は倒す」
俺「次も倒す」
うねらせた蝶の盾で四方八方から攻撃が来る。しかし、それらには掠りもせずにヒュースの首を落とした。
俺「残念。守りを緩めたら今みたいになるぜ?」
3本目
ヒュ「さっきのはなんだ」
俺「テレポーターって言うオプショントリガーだ」
ヒュ「成程」
今度は2人同時に蝶の盾と変化弾を展開する。俺の放った変化弾は全て跳ね返された。集まった蝶の盾が大きな盾となったのだ。
変化弾がダメなら次はコレだ。
俺「炸裂弾」
再び1728分割されたキューブがヒュースへと飛ぶ。さっきと同様に跳ね返そうとしたが、着弾と同時に爆破した。
ヒュ「なっ!?」
俺「隙あり」
わかり易く動揺するヒュース。距離は敢えて詰めず、旋空弧月で真っ二つにする。
♢♢
順調に勝ち続け、次は最終ラウンド。
俺「今の所傷付ける事すら出来て無いけど…何か考えは浮かんだか?」
ヒュ「...」
俺「あぁ、嫌味を言ってるわけじゃない。俺、対戦相手に指導する癖があるんだ。あまり深く考えなくていい」
ヒュ「いや、いい考えが浮かんだ」
そう言って不敵な笑みを浮かべ、蝶の盾を触手のように展開する。そして2本目と同様、数本の蝶の盾が俺に襲い掛かる。
先程と同様にテレポーターで後に回る。しかしそれが仇となり、俺の両腕が落ちた。
