第6章 武士
人生とは、こんなにも浮き沈みが激しいのかと思うほど、京に上がって数年で本当にいろいろなことがあった。
八月十八日の政変をはじめ、池田屋事変、禁門の変、油小路…
剣をふるい、血に濡れながらも、決して武士としての志は失うまいと、必死で駆けてきた数年間。
後悔だけはしたくない。
いつかあいつに、胸をはって逢えるように。
―慶応三年 鳥羽伏見の戦い。
薩摩、長州の持ち出した近代兵器を前に、新選組をはじめ、幕府軍は総崩れになった。
錦の旗を掲げた薩長に、完全に敗北したのだ。
この戦いで、源さんや山崎も失った。
共に戦ってきた仲間と別離れるのは、身を切られるよりも辛かった。
大阪で療養中であった近藤さんや総司と合流し、先に撤退してしまった将軍 慶喜公を追って、なす術もなく、江戸へと戻ってきた。
―近藤さんの怪我が治ったら、次の戦がはじまる。
江戸へと戻ってきた歳三は、戦に備えて奔走した。
洋装や銃火器、薩長に対抗出来得る物を、可能な限り集めた。
そして慶応四年三月、甲陽鎮撫隊を結成し、内藤新宿から甲府城へと向かった。
その道中、故郷の日野へと立ち寄ることとなった。