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【薄桜鬼】桜花恋語

第1章 叶えたい夢




はらはらと舞い散る桜の花に、

春のひだまりのように微笑む、君の姿を重ねて。




ただ一度、掠めた唇の感触が


今尚、俺を捕らえて離さない…。
















「…土方さん、お手紙です」

「あぁ…入れ」

廊下から聞こえた千鶴の声に、筆を止めずに入室を許可する。

書き途中の書状から顔も上げずに、手紙をそこへ置いておけ、と告げれば、千鶴の口から懐かしい名が零れた。


「…ゆきさんという、女性の方からお手紙です」


ぴたり、と筆を止めて振り返れば、千鶴は驚いたように目を丸くして。

「土方さんが女性からの手紙に反応するなんて…珍しいですね」

「…うるせぇ。そいつは島原の妓とかじゃねぇんだよ」

直接手紙を受け取って、裏に書かれている名に、ふと表情が緩む。


「…特別な、方なんですね」


何やら興味津々といった様子の千鶴に、慌てて緩んだ頬の筋肉を引き締めなおす。

「よ、余計なことは聞くな…!」

「まーた照れちゃって。言っちゃえばいいじゃないですか。特別も特別。彼女は別格だって」


急にひょっこりと副長室に顔を出した総司の、にんまりとした笑顔に思わず声を荒げる。

「総司!!」

「僕や近藤さんも手紙もらいましたからね。相変わらずまめな人だなぁ」

手に握られた手紙を軽く揺らしながら、総司は再び目を細めた。


「…まぁ、土方さんの手紙が一番厚そうですけどね?」

「うるせぇ!用がねぇならとっとと出てけ!!」

照れ屋なんだから、なんて言う総司と、ついでに千鶴もまとめて部屋から追い出して。

一人になった部屋で、もう一度送り主の名を確かめて。


そっと、手紙を開いた。



はらり、と中から舞い落ちてきた桜の花びらと共に、

やわらかな、優しい文字が目に入る。





『―故郷の香りを、送ります―』




思わず零れる笑みと共に、脳裏に甦るのは




愛しい、想い出たち。




―そう、それは懐かしき日の、淡い恋物語…。












○桜花恋語~oukakoigatari~○













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