第3章 流麗な夢をキミと
清水が作ってくれた花を持ち、ちゃんの横にそっと跪く。
「お嬢様、今日の思い出にこちらをお持ちください」
『これは・・・』
そこまで言いかけてちゃんは言葉を詰まらせた。
顔を覗けば、ゆっくりと瞬きをしながら大きな涙をひとつ・・・零していた。
日「あーーーっ!!菅原さんが泣かせた!」
影「小学生かっ!!」
あちゃ~、急に現実世界・・・
『ちっ、違うの!なんか・・・いろいろとビックリして。それから、嬉しいのとか混ざって・・・』
そう言いながらも、次々と零れる涙を止めることもせず、ただ、ただ、顔を隠す様にちゃんは俯いた。
日向の叫びに、大地と旭も側に集まって来た。
澤「さんゴメン、泣かせるつもりじゃ・・・」
『違うんです・・・こんな風に喜ばせて貰ったのが嬉しくて。そしたら私は、みんなに何をしてあげられるんだろうって、それで・・・』
澤「そんな事は気にしなさんなって。いつも一生懸命やってくれてる、ご褒美なんだから、ね?」
「左様でございます」
澤「・・・スガ?」
出来るなら、まだ・・・夢を見せてあげたい。
誰か一人にでも、小さくても幸せな夢を見せてあげたい。
だったら、オレが・・・
「さぁ、お嬢様?まだ・・・目を覚まされては困りますよ?」
もう一度、手にした花を掲げてみる。
『あ、りがとう、ございます・・・甘い香りがしますね』
そっと鼻に近づけ、ちゃんは笑った。
縁「お嬢様、温かい物とお取り替え致します」
オレの意図を汲み取ったかのように、縁下が淡々と執事の役を続ける。
・・・こんな夢なら、いつだって見せてあげる。
いや、オレが見たいんだ。
だから・・・
もう少しだけ、いいよね?
ゆっくりとちゃんの手を取り、そこに口付ける。
オレも小さな夢を共有したいから。
流麗な夢を・・・キミと・・・
~END~