第1章 # FFFFFF
『……どうして?』
『全部智の為よ』
『だったら…! 先生に、友達にだってちゃんとさよなら言わせてよ…!』
『必要無いわ。』
必要無いのはお別れの挨拶の事なのか
絵画教室そのものなのか
それとも、
母さんがある日突然
絵画教室を辞めて、僕に絵画の個人レッスンの先生を付けると言い出した
『智だって一対一で指導してもらった方が集中出来るでしょ。
お教室の先生には母さんがちゃんとご挨拶しておいたから心配ないわ』
それは、さっきの電話でしょう…?
リビングに響いた母さんの声は人を威圧するような棘のある言い方で
“環境が悪いようなので辞めさせて頂きます”
って言ってた
…慎吾は……?
慎吾とは、もう会えないの?
“絶対似合うから! ほら、一つやるからさ!”
“いい、いいってば…!”
“遠慮するなって!”
あの日手のひらに無理矢理捩じ込まれた、深い青色をしたピン留め
ズボンのポケットに忍ばせていた、慎吾と自分を繋ぐ小さなピン留めを
僕はギュッと握りしめた
やっぱり大人はリフジンだ
意味は分からないけど
リフジンだ、ってそう思った