第4章 # 4n5
「二人は同じ歳?」
「あ、いや…
僕は今年29になります
あの、」
「…兄さん、」
さっきまで殆ど言葉を発しなかったカズが僕を呼んだ
「あの日、どうして、」
聞きたい事はわかってる
言わなきゃいけない、って事も
相葉くんは今にも泣き出しそうな顔でカズを見つめてる
まだ明るい午後のリビングを静寂が包んでいた
15年前
何故、僕はカズを置いて失踪したのか
何故、東京から四国へ移り住んだのか
「…話すよ、全部」
そう、全部。
「智、」
「逃げたんだ」
「……え…?」
「自由に、なりたかった
カズに全部押し付けて…逃げたんだよ、俺」
俺、なんて
普段殆ど使わないクセに
「逃げたんだ」
「違うんだよ、和也くん…!
俺が智に言ったんだ
一緒に逃げよう、って言ったんだよ…!」
「…二人はいつから知り合いなんですか…?」
「小学2年の時から、」
「…知らなかった。町田さんの事、俺、全然、」
驚いただろ、僕に20年来の友人がいたなんて
「…同じ絵画教室に通ってたんだよ
クラスは違ったけどあるキッカケで仲良くなって
まぁ…その後、俺は辞めさせられたけどさ…
中1の林間学校で再会したんだ
その時約束した。中学を卒業したら一緒に逃げよう、って
でも、」
「…でも……?」
「捏造されたあの絵を見て…
もう無理だ、って思った
だから…俺から慎吾にSOSを出したんだよ…」