第4章 # 4n5
そして迎えた8月。
世の中は所謂、盆休みというやつで
工房から見える海辺には沢山の人、人、人。
そう言えば、四国に来て一番最初にした仕事は海の家の手伝いだった
ビキニのお姉さんに『可愛い』なんてほだされながら、必死に焼きそばやカキ氷を売ってたっけ
「うっせーぞ、蝉!」
「仕方ないじゃん、夏なんだから」
今日はあの、桜のサーフボードの受渡し日
ボードは既に店に持っていってあるから、本当は僕達が立ち合う必要は無いんだけど、
「大丈夫だよ。達兄も言ってたろ?」
凄く喜んでくれた、って
確かにそう言われたけどやっぱり心配で。
「まぁ、実際にお客さんの反応見るまではな、」
オーダーメイドは何度経験しても毎回同じ様に緊張する
ジリジリと照り付ける太陽の下
夏の音を聞きながら、僕達は街中にある達也さんの店へと急いだ
「いらっしゃ… おぉ、お前ら丁度よかった!
奥のお客さんの接客頼む!」
今日はバイト君がいないのか、僕達を見るなり達也さんが“ゴメン”のポーズを取る
「俺行くよ」
慎吾が小走りで店の奥へ行ってしまうと、
――― プルルルル プルルルル ―――
今度は勢い良く電話が鳴り出した