第4章 # 4n5
「いつまでも眺めてないでさ、こっち来て珈琲飲んだら?」
「あー、うん」
さっきから、ずっと。
ボードのベースに塗装した紫のグラデーションを慎吾はずっと眺めてる。
よっぽど気に入ったんだろう
「これさ、なんて色かな?」
カラーコードにもピタリと一致するものはなくて
ふと考えた
「# 4n5」
「シャープ ヨンエヌゴ? …あ。」
気付いたか。
「シンゴ、だ。」
だってそれは慎吾の色だろ?
お前のアイデアで、お前が創り出した色だ
「シンゴ、かぁ」
嬉しそうに、それでいて照れ臭そうにへへっ。と笑う慎吾に、テーブルに置いてあったラベル紙にマジックで “# 4n5” と書いて手渡した
「俺の色だ」
ブリキ缶の側面にそれを貼ると # 3104の隣りに並べて置いて
それをまた、飽きもせずにずっと眺めていた
「おおー! イイじゃん、イイじゃん!」
7月下旬。
僕達は完璧に仕上がったサーフボードを達也さんの店に納品した
評価は上々で、ホッと胸を撫で下ろす
この夏でネット販売の売上が一気に加速し、LOLのブランド力も上々。
怖くなるくらい全てが上手く回っていた