第3章 # 800080
制作の経過は順調だった
ストックしてあるボードはシェイパーの城島さんがハンドシェイプしたもので、初心者でも扱いやすいと評判だ
だけどペイント剤の調合には時間を要した
思うような紫色にならなくて気ばかりが焦っていたんだ
「一息入れたら?」
「あぁ…ありがと。
なんかさ、納得が行かないんだ」
アイス珈琲のグラスを受け取ると、それを一口口に含んだ
「珍しいね? ちょっと見せて」
慎吾がブリキ缶の中を覗き込む
「キレイな色だし、デザイン画のカラーを忠実に再現してるとは思うけど…何か物足りない、って感じ?」
「そんなとこ」
桜の花びらとマッチさせるには、ベースは赤味の強い紫の方がいいのは分かってる
「青が足りないんじゃねぇ? 足してみりゃいいじゃん」
「でもさ、」
ここに青を足したら紫が深くなり過ぎてしまう
「大丈夫だよ。サトシブルー、入れてみなよ」
# 3104を?
# 0000FFじゃなくて?
「絶対良くなるから」
慎吾がそう言うとそんな気がしてくるから不思議だ
「…やってみるよ」
慎重に、少量ずつ#3104を足して行く
「…あ。」
この色、イイ。
「うん、イイね!」
想いを汲み取るように
慎吾が僕にOKのサインを出した