愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第5章 一栄一辱
智side
もうどれだけの時間が経ったのだろう・・
ただ一つ、明り取りの窓があるだけの部屋で、僕はずっと空を眺めていた。
流れる雲を見ては、悪戯に松本潤の手の中に飛び込んでしまったことを・・、自分の考えが如何に浅はかであったかを悔いた。
「大人を甘く見るもんじゃないよ」
酒に酔わされ、羞恥の欠片もなく求めた僕を見下ろし、あの男は言った。
確かにそうだ。
僕は、男なら誰でも僕の手に落ちる・・そう思っていた。
今までの男がそうであったように・・
でもあの男は・・松本潤だけは違ったんだ。
あの男は最初から気付いていたんだ、僕が目的のために近付いたことを・・
その上で僕にあんな屈辱的とも思えるような真似を・・
なんて酷い男。
許せない?
僕から全てを奪った上に、僕にあれ程までの屈辱を与えるなんて・・
絶対に許さない。
そう言えば和也は・・、彼は大丈夫だろうか・・
和也の姿を見たのは、あの日が最後。
まさか僕との関係者が松本に知れて、それで・・?
いや、そんな筈はない。
和也ならきっと上手くやる筈だ。
教養なんて無くても、和也は僕なんかよりもずっと頭が良いんだから。
それにあの日、和也は雅紀さんを客間に案内したきり、暫く戻って来ることはなかった。
もしもの場合は雅紀さんに・・
駄目だ駄目だ・・。
あんなに酷い裏切り方をしておいて、まだ雅紀さんに縋ろうなんて、そんなの都合が良過ぎる。
ああ、和也・・
どうか無事でいて・・
そして一刻も早く僕をここから連出しておくれ
こんな鎖に足を繋がれたままでは、僕はあの窓から羽ばたくことすら出来ないのだから・・
どうか・・
どうか・・・・
僕は床に膝を付き、、明り取りの窓から僅かに覗く太陽に向かって、手を合わせた。
そして胸元で十字を切ると、深い祈りを捧げた。
僕がまだ今よりもずっと幼い頃、父様と母様がしていたように・・
神様はいらっしゃるんだよ・・
僕にそう教えてくれた両親が、いつもしていたように・・