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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第3章 兎死狗烹



「残念ながら俺をその気にさせることは出来なかったようだが‥。ここまで敢闘したからには、褒美をやらねばな?」

下衣を整えた俺が投げ出された足首を掴むと、みるみる間に表情を凍りつかせていく。



‥‥いい表情(かお)だ‥


これから美しく歪んでいく幼気な表情(かお)を想像するだけで、嗜虐の愉しみに背筋がぞくぞくとしてくるようだった。

俺が自分の指に唾液を纏わせるのをみて、何をされるのかわかったのか身を翻そうとする。


「ひっ‥‥!」


解きほぐされた淫らな孔に、幼き指よりも遥かに太い指を突き挿して‥

びくりと身体を強張らせ仰け反る胸もとに、堪らない満足感を覚えてしまう。


だが、自分の指を咥えこむ柔らかな肉壁を抉るように抜き挿ししてやると、潤いを失いかけた皮膚が不快に纏わりついた。


「許し‥て‥、後生です‥から、も‥‥、あぁぁっ‥‥」


誰に縋ることもできずに、苦痛に身を捩る姿に唆られはしたが‥


「残念だが‥今日はここまでだな。俺も忙しいんでね。」

女のように潤わない孔は不快でしかなく、纏わりつくそこから指を抜くと、強張っていた身体がくたりと弛緩した。


「そっ‥そんなっ‥」

自分の淫欲を満たしてくれない俺を見上げる泣き濡れた瞳には、まだ収まりきらない情欲の灯火が揺れている。


「くくっ‥まだ身体が熱いのか。どこまで淫乱なんだ‥お前みたいな男は初めて見たよ。」


「僕はただ‥っ‥貴方に‥‥」

と、身体を投げ出したまま乱れる息のなかで、まだ尚、縋るようにそう言う。


「‥‥俺に‥何だ‥?抱かれたかっただけだというのか?」

「ええ‥そうです‥」


そんなことはあるまい‥‥

「ただ優しく抱いて欲しいだけなら、あいつに頼めばそうしてくれるさ。‥‥どうする?俺から頼んでやろうか?」

込み上げる笑いを嚙み殺しながら、そう皮肉めいた口ぶりで嘯いてやると、色めいていた瞳が一瞬、暗い影を落とした。


「やだっ‥貴方が欲しいっ‥貴方だけがっ‥」

散々嬲られて立ち上がることもできない獣が一瞬だけみせた意思。


「‥じゃあ‥時間をかけて、お前の本気をみせてもらおうか‥。その気になったら、いつか抱いてやるさ。」


裾についた汚れを払いながら言い放つ俺を見上げる美しい獣は‥これからの愉しい時間(とき)を予感させるように、妖艶に微笑んだ。
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