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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第10章 智勇兼備


潤side


小さな明かりが灯るだけの部屋に戻ると、上着を脱いで長椅子へと放り出す。


僅かな物音では病の身に届くはずもなく、寝台の上の膨らんだ布団はぴくりとも動かなかない。

俺を拒んだ身体を無理矢理開かれた智は高熱を出して寝込んでしまい、ぐったりとそこに横たわっていた。


さして酔ってもいなかった俺は枕元にあった洋酒に手を伸ばし、その力で思考を奪うが如く瓶ごと呷る。

独特の香りがする液体は喉を灼くような感覚を残しながら、そのまま五臓六腑に染みていく。

その痺れるような酔いは俺の焦燥を煽り、苛立ちを増した。


と同時に得も言われぬ寂しさを胸の底に感じる。


‥‥寂しいだと‥?

この俺が‥


欲しいと思ったものは全て手に入れることのできる俺が‥

満ち足りている筈の人間なのに‥寂しいなどと思うはずがない。


思い通りにならないものは力づくでも奪ってきたというのに、何故そんなことを感じてしまうのかが分からなかった。



この男さえ‥俺を拒まなければ‥‥


寝台の傍らまで行くと、昏々と眠る智の横顔を忌々しげに見つめる。


一体何を与えればお前は満足する‥?

お前の欲しいものは何なんだ‥


共に快楽に堕ちることを拒むことなど許されない立場だということを忘れ、罰を受けたかのように病に伏した男の顎に指を掛け上を向かせる。


「俺のものになれ‥。俺が満足するまで、その身体を快楽の底に沈めてやる。逃げることは‥許さない。」

俺は深い眠りの中にいる情人には足りぬ男に、己の運命を囁く。



‥智‥‥

お前が俺を狂わせたんだ‥


その罪の重さを思い知るがいい‥




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