愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第2章 暗送秋波
雅紀side
あの夜から‥私は夜毎屋敷を抜け出し、智のもとを訪れた。
世間から切り離されたような離れの小さな部屋で、愛おしい君だけを見つめて‥狂おしいほどの愛を囁き続けた。
冬の気配が忍び込む私たちの間を埋めようと肌を重ね、身体を蕩かせてしまいそうなほどの熱を与えあう。
愛してやれば愛してあげるほど、快楽に顔を歪めて喘ぐ智は、この世のどんな美しい花よりも幻想的で妖艷な姿を見せてくれた。
「‥雅紀‥さんっ‥‥ああっ‥っ‥」
障子窓の隙間から射し込む冷たい月の明かりに照らされ、私の上で白い身体をくねらせながら、あられもない嬌声を上げて快楽に染まってゆく。
普段見せてくれる愛らしい姿とは全く別人のような淫靡さは、どこまでも私を狂わせた。
「ああ‥綺麗だ‥‥私を咥えこんで啼くお前が‥一番美しい‥‥」
私は頼りないほどに細い腰を支えると、その奥深くまで熱い杭で鋭く突き上げる。
「あんっ‥ふかいっ‥‥っ‥はぁっ‥‥」
身体の奥で私を受けとめて涙を流す君は‥‥
その閉じられた瞼のなかに何を映しているのか‥。
夜毎、甘美な蜜の味に酔いしれる私なのか
君の首すじに白い手を伸ばしていた青年の姿なのか
それとも‥‥
「‥存分に‥啼くがいい‥‥その美しい声で‥」
「ああ‥っ‥ゆるしてぇ‥っ‥‥」
お前は私だけのものだ‥‥
‥‥誰にも渡しはしない‥
深い快楽に身を崩しそうな智を組み敷くと、その果てを見つめて腰を打ちつける。
「‥もう‥っ‥だめぇ‥あっ‥あっ‥‥」
揺らされ続けて歓びに震える美しい身体は最高の時を迎えて‥‥
「くっ‥っ‥はっ‥はぁっ‥‥はぁっ‥‥っ」
「あああっ‥っ!‥はぁっ‥っ‥」
智は散る花の如く白い熱を放ち、私は滾るような想いを愛しき者のなかに迸らせた。
絶頂の時が過ぎてしまえば‥あたりを満たしていた熱い吐息は儚く消え、冷えた空気が私たちを包んだ。
さっきまで身体の中を巡っていた熱の温度が高ければ高いほど、喪失の哀しさが私を苦しめる。
ああ‥足りない‥‥
まだ‥‥足りないのだよ‥‥。