愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第9章 愛及屋烏
雅紀side
まるで屋敷の中で追いかけっこか隠れんぼをしているかのように逃げ出してしまう和也。
どうせすぐに私が捕まえてしまうことぐらい分かっているだろうに‥。
和也が一目散に駆けていく先は、私の部屋しかない。
そしてこちらに背中を向けていたあの様子だと、長椅子に腰掛けて待つなどという余裕は持ち合わせていないだろうから、大方布団の中で亀のように手足を引っ込めて丸くなっているに違いない。
「私もずいぶん寛容になったものだな‥。」
焦らされることも楽しいと思えるようになったのは、和也の可愛さ故だろう。
火照った身体を冷ましながら部屋に戻ると、案の定寝台の布団がこんもりと山になっている。
私は寝台の傍の引き出しから掌に乗るほどの小さな瓶を出してそこに置き、布団の中で真っ赤になっているだろう恋人の背中を撫でながら、どんな表情(かお)を見せてくれるだろうかと、その時を心待ちに隣に添った。
そして顔を見られたくないと恥ずかしがる和也の襟を解き、湯上りのしっとりとした肌の上を愛しむように撫でていけば、少しずつ息を乱していく。
持って生まれた白磁のような肌は、湯上りのせいか薄っすらと色づき、顔を隠してるつもりだろうが、それが逆に艶かしい首筋を曝していることにも気付いていない。
先刻付けた赤い痕を見つめながら、とろりと蜜を溢している茎を掌で包み込んでやると、
「あっ‥あぁっ‥、そんなことをされては‥」
素直な身体とは裏腹な言葉で私を煽った。
「ここはこんなに素直に触れられたいと蜜を溢しているのに‥」
熱く硬さを増していく茎の先からはとろとろと蜜が溢れ、解けていく身体は少しづつ私を受け入れたいと声を洩らしはじめている。
「私は和也に触れて欲しいと思っているよ‥。身体が熱くなっていくのは愛おしさの証なのだから、恥ずかしくなどないが‥君はまだ全てを見せてくれてはいないのだから無理もないのかもしれないがね。」
白く伸びた首筋に唇を当て、耳の傍近くでそう囁いた。
するとそろりと布団の陰から顔を覗かせた恋人は、淫慾に濡れた瞳でじっと見つめると
「おれ‥雅紀さんに触って欲しい‥恥ずかしいけどっ、でもっ‥貴方のものになりたいっ‥」
そう言って、唇を薄く開いて私を呼んだ。