愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第6章 籠鳥恋雲
潤side
一瞬で妖しい焔を灯した瞳で俺を見上げた大野智は、口もとに微かな微笑み(えみ)さえ浮かべて、俺を見上げた。
これが‥お前の性(さが)なのか。
愛されることも、人を愛するということを知らぬお前は、快楽を共にすることでしか愛を得られない‥憐れな人間なのか‥
所詮、俺を愛せと言った意味が分かる訳がないのだな‥
「ならば俺も存分に愉しませて貰おうか‥」
小さな顎に指をかけると煌めきを増した目には、ゆらゆらと情慾の焔が誘い込むように揺れているだけで、他に何も映してはいなかった。
そして俺は不覚にも、身体の奥底を掻き乱してしまいそうなその焔に引き摺り込まれそうになって、慌てて背を向けた。
お前たちが堕ちた世界には興味など無い‥
嬲り愉しむことはあっても、そこに染まることなど‥あってはならない!
すると背後でじゃらりと鎖の音が鳴り、それとわかる衣擦れの音がする。
やめろ‥‥振り返ってはだめだ。
俺は堕ちはしない‥
そう頭の中で叫ぶ自分がいるのに、何故かそこから動けずにいると、するりと足元に跪いた白い身体が下衣を乱した。
「気が失せた言っただろう‥」
だが散々、悪戯に淫欲に乱し続けた淫らな身体を‥
自分の情慾の証を咥え込んだ、あの感覚を俺の身体は忘れてはいなかった。
語気も弱まった俺のものを、躊躇いなく咥内に迎え入れると、卑猥な水音を立てながら育てていく。
あの唇が‥赤くちらつかせていた舌が‥
俺を抗えない情慾の罠へと引き摺り込もうと蠢いていた。
「それがお前のやり方か‥。そうやってお前は‥‥」
雅紀を虜にしたのか‥
そして今度は俺を‥引き摺り込もうとするのか‥
堕ちるまいと足掻く気持ちとは裏腹に、あの淫らに蠢く肉壁の感覚を求め、血が滾りはじめていく。
両足が凍りついたように動かなくなった俺は、シャツの釦を外され‥冷たい外気に晒された肌に、大野智の知る愛の慾を染み込まされていった。
「憐れなものだ、あいつも‥‥、お前も‥」
俺は胸もとで自尊心を奪わんとする前髪を掴むと、赤く濡れた唇に目を奪われ、妖しく揺らめく焔に心を奪われた。
そして俺は、その愛の慾に満ちた世界に引き摺り込まれようとしていた。