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隣の君

第12章 伝える勇気


からからと小さな音を立て

ベランダの窓を開けると



ぼんやりと聞こえていた音は

はっきりと輪郭を帯びて

私の耳に届いてくる…



あの日と何一つ変わらず


歌詞の意味さえ解らないのに


でもなぜか胸を締め付ける

お隣さんの歌声…



もっと近くで聞きたくて


ベランダに足を踏み出すと

出しっぱなしにしていたハンガーに

ぶつかって

がらがらと嫌な音を立て




確かに聞こえていたはずの歌声が

ぴたりと止んでしまう…



何も見たくない…

何もしたくない…

何も聞きたくない…



そう願っていたはずなのに



もう少しだけ…



そう心が願ってしまって…



「ねぇ…?


私を嫌いになっても…

二度と会えなくてもいいから…


今だけ…

もう少しだけ…でいいから…

すばるの歌…が聞きたい…!」




ぼろぼろと溢れてくる涙と一緒に

そんな言葉を吐き出すと…




その瞬間


ぐにゃりと空が歪んで

目の前の景色が真っ暗に

染まった…
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