第10章 好きなのは…?
「あの…これは…どういう…(汗)?」
目の前1センチの距離に
迫りくる松本くんの顔に
あわあわと慌てる私に
「これでもドキドキしませんか…?」
いつもの笑顔をどこへ置いてきたのか
真面目な顔でそう問いかける…
そんなまっすぐな松本くんの視線から
目をそらし
「まっっったくしません!!」
そう勢いよく言ってみたものの
近すぎる距離に
松本くんの体温や息づかいが
嫌でも伝わってきて…
意識なんかまったくしていなくても
どくんどくんと心臓は
無駄に大きな音を立てる…
そんな私の複雑な感情を
見透かしたように
「でも……
先輩の心臓の音
ちゃんと僕に聞こえてますよ(笑)?
これは僕にもまだチャンスがあるって
ことですよね?」
そう言って笑った松本くんは
ただでさえも近い顔を
ゆっくりと近付けて
避けようと暴れる私の手を
痛いほどに握りしめる…
どうやっても
逃げだすことも出来そうになく
今にも触れそうな唇に
「いや…だ……」
そう小さく叫び
ぎゅっと目を閉じた瞬間
体が急に横に引き寄せられ
その勢いで私の体は
私を引き寄せた腕に抱き締められる…
今度は何事…(汗)?
なんて恐る恐る開いた私の目には
ひどく不機嫌に松本くんを睨み付ける
お隣さんの顔が映りこんだ…(汗)