第1章 The summer vacation ~Draco~
いくら魔法使いの寿命が長いといっても、ドラコの言うとおりもう1度スイフト・タットル彗星が回帰する2125年まで生きていられる保証なんてどこにも無い。それこそ賢者の石でも使えば話は別だが、それは数ヶ月前に持ち主が壊してしまった。
「そんなに長生きできる人なんて、ほんの一握りだぞ」
「じゃあ、僕らがその一握りになればいいだけさ」
「……133年後は145歳だ。きっと私もお前もしわくちゃのジイさんとバアさんになってるよ」
「いいじゃないか、それでも」
例え彼女の黒い髪が真っ白になっても、顔中しわだらけになってもクリスはクリスだ。そして133年経っても、その隣で同じように白髪で深いしわを彫り込んだ自分と、お互い減らず口を叩きながら、流れ星を見たか見てないとか下らない喧嘩しているのだろう。
その様子を想像して、ドラコとクリスはちょっと笑ってしまった。
「本当に見られると思うか、ドラコ?」
「見られるさ。こうしてまた、2人そろって」
「そうか――うん、そうだな。よし」
こりずにクリスは胸の前で手を組むと、真剣な眼差しで夜空を仰いだ。
「今度は何をお願いするつもりだい?」
「133年後も、ドラコと一緒に流星群が見られるようにって。それならいいだろう?」
「……そうだな、それくらいなら星に願うのも悪くない」
本当ならこんなことガラじゃないが、133年に1度の気まぐれだ。クリスの隣で、ドラコも同じように手を組み、流れ星を待った。
133年後の今日この時、再び彼女の隣で流れる星空を見られることを願って――。