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ハリー・ポッターと純血の守護者

第9章 【心の声】


 クリスは最短距離で校舎を突っ切ると、勝手知ったる様子でハグリッドの小屋の戸をたたいた。そして返事も待たずに扉を開けると、まず目に飛び込んできた鮮やかな紫色に思わず目を奪われた。

「遅くなった。ハグリッ――」
「おや、これはお早うございますミス・グレイン」

 鮮やかな紫色のローブの主、ギルデロイ・ロックハートが何故か家主より先にクリスに挨拶をした。その奥では、迷惑そうな顔をしたハグリッドが一人不機嫌そうな様子でたたずんでいる。これはいやな現場に出くわしたと、クリスはとっさにきびすを返そうとしたがロックハートがそれを許すはずがなかった。

「たった今彼に井戸の中から水魔を追い払う方法をお教えしていたところなんですよ。なに、方法さえ知っていればとても簡単なんです。よろしければ貴女にもお教えしましょうか?そうすれば闇の魔術に対する防衛術で他の生徒から1歩リードできることになりますよ」
「いえ、結構です。必要とあらばその時学びます」
「なにご心配なく、これくらいは贔屓には入りませんよ。それに……貴女は少々私を誤解している点があるようですからね」

 誤解じゃなくて事実だろ、とクリスはロックハートを睨み付けた。しかしロックハートはそんなクリスの態度は無視して、井戸から水魔を追い払う方法だけでなく、自分がいかに勇敢で魔法の才能にあふれ、また慈悲の心を持ち平和を愛しているかを滔々と語った。
 クリスはその間にハグリッドからお茶を入れてもらい、チャンドラーのお説教を聞き流すがごとく虚無の心でもってそれに対処した。ロックハートは熱弁中自分の世界に陶酔しているので、クリスの無関心さには全く気づきもしない。

「――そこで私は気づいたのです!そう、愛こそ平和への第一歩だと!!どうですミス・グレイン。これで私のことを少しでも理解していただけましたかね?」
「え?ああ、そこそこ」

 クリスの返答に何を期待していたのか、ロックハートはガクッと肩を落とした。しかしそれだけで諦める男ではない事を、クリスは次の瞬間身を持って体感することになった。

「そうですか……まあ、今日のところはそれでいいでしょう。ところでミス・グレイン。貴女がいつも持っているその大きな杖は一体何なんです?」
「ああ、これは――」
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