第6章 【Opening】
その途端2人の顔が変わった。大声を出したいのを、周りの目をはばかってぐっと堪えていたが、勢いだけは止まらず、ずずいっとクリスにつめよった。
「どうりでおかしいと思ったんだ、寮監でもないスネイプがどうして僕らを探してたのか!」
「あれは君の差し金だったの?!お陰で僕達さんざんな目にあったんだよ」
「まあそう言うな、私だってわざとやったわけじゃない。それに2人が怒られるだけの事をしたのも事実だろう?」
いけしゃあしゃあと自己弁護をするクリスに腹は立つが、今回、自分達がそれだけの事をしたと言われればそれまでだった。本来ならクリスも彼らに対し負い目がなければ、ハーマイオニーと一緒に女子寮へ向かっているはずだ。
ハリーとロンが大人しくなったのがわかると、クリスは2人の肩に手を乗せた。
「でも、まあ無事にまた会えてよかったよ。頼むから、もう2度とこんな事しないでくれよ。これでも結構心配したんだぞ」
「……分かってるよ」
「なら良いよ――じゃあ、私はもう部屋に戻るぞ。2人も今日は早く寝ろよ、疲れてるんだろう」
「うん。お休みクリス」
最後に肩を軽く叩くと、クリスは一足先に談話室を後にした。螺旋階段を上り新しい真鍮のプレートに自分の名前を見つけると、ノックもせずに部屋に入った。内装に特に変わったところはなく、懐かしい4つの天蓋付きのベッドのわきにはそれぞれのトランクが詰んである。そのうちの1つには、もうすでにカーテンがひかれていた。
「ハーマイオニー」
クリスはカーテンの引かれたベッドに話し掛けた。寝ているのか、または拗ねているのかベッドの主から返事はなかったが、かまわずそのまま話し掛ける。
「2人とも『迷惑かけてごめん』って謝っていたぞ」
「……もういいのよ、そんなこと」
「じゃあ、何で怒ってるんだ?」
「知らないっ……!」
カーテンの奥からハーマイオニーのくぐもった声が聞こえた。これ以上言うと余計彼女の機嫌を損ねると思ったクリスは、もう何も言うまいと思い、自分もベッドに入って眠ってしまった。
しかしどちらにせよ、この時のクリスにハーマイオニーの微妙な乙女心など知る由もなかった。