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ハリー・ポッターと純血の守護者

第6章 【Opening】


 ホグワーツの大広間は、去年クリス達が入学してきた時と同じ装飾が施されていた。壁には各寮の立派な旗が掲げられ、空中には何千という蝋燭が浮かんでいる。木製のテーブルに並べられたピカピカの銀食器は蝋燭の炎を反射して、なんとも言えない幻想的な雰囲気をかもし出している。
 本来なら1年ぶりのその光景と懐かしさにどっぷり浸りたいところだが――残念ながら、今はそれどころではなかった。なにせ寮を問わず千人近い人間の視線が、クリスとハーマイオニーに集中しているのだ。
 クリスはどこに目を合わせればいいか迷った末、教職員用のテーブルを見つめた。

「……やっぱり、スネイプの姿が見当たらない」
「あらそう」

 隣に座るハーマイオニーがつっけんどんに答えた。
 彼女のご機嫌は今や最悪の極みだった。ハリーとロンが自分達を除け者にして――おまけに“学校で決められた”ホグワーツ特急ではなく――空飛ぶ車を使っていたことに、これまでの心配が一気に爆発して怒りに変わったようだ。

「私達に何の知らせもなく、勝手な行動をした方が悪いんだわ。丁度いい薬よ。あの2人はこっちがどれ程心配するのか、ちっとも気に留めてないんだから!それにあんな車で学校に来るなんて、今度という今度は愛想が尽きたわ!」
「ま、ハーマイオニーのいう事は尤もだけどな」

 しかし、この意見はグリフィンドール内では少数派だった。大多数の人間はハリーとロンの行動に、疑問どころか期待と喜びをもって、彼らの凱旋を心待ちにしている。得に双子のフレッドとジョージは、弟のロンが自分達を誘ってくれなかった事を本気で悔しがっているほどだ。
 その傍らでは、いつ手に入れたのか双子の相方リー・ジョーダンが、日刊預言者新聞の夕刊版を手に周りにあることないこと吹聴している。

 他の寮でも、同じように数人が新聞を片手にしている。見出しにはこう書かれていた。『空飛ぶフォード・アングリア、イギリス縦断!』と。お陰でクリス達の隣りの空席に、好奇の視線が痛いほど集まり、そしてそれが余計にハーマイオニーの怒りをつのらせていた。

「周りの迷惑って言う物を、あの人たちはこれっぽっちも考えてないのよ。特にジニーなんて散々心配させられた挙句、せっかくの組分けも見てもらえないだなんて!」
「確かに遅いな、もうとっくに着いていてもいい時間なのに」
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