第28章 【トム・リドル】
クリスが精霊を召喚しようとしている間、まるで何もかも分かっているかの様に、ハリーがリドルの気を自分自身に繋ぎ止めてくれていた。
「僕がなぜ生き残ったのか?――それは母さんが僕を守ってくれたからだ。君が蔑んでいるマグル生まれの母さんが僕を守ってくれているからだ!!」
「――そうか、母親が自分の身を犠牲にして君を庇ったのか。成程、それは呪いに対する強力な反対呪文だ。つまり君には何の力も無いと言う事だな。これで分かった、安心して君を殺せるよ」
そう言いながら笑った顔は、背筋が凍るような冷たい笑みだった。それが今度はクリスの方を向いてきた。
「お待たせクリス・#NAME22#。君にもいくつか聞きたいことがあるんだ。純潔の、それもサラザール・スリザリンという最高の魔法使いの家に生まれながら何故君は純血主義にならなかったんだい」
「そんな事、貴様に教えてどうなる!」
「僕にとっては重要なことなんだよ。場合によっては、君を殺さなければならない」
「……殺す?」
「そうだよ。僕の言う事を素直に聞いてくれれば、殺したりはしないけどね」
リドルの「殺す」と言う言葉は、さも当たり前のような真実味を帯びていた。クリスは背筋が凍るような思いがしたが、己を奮い立たせるためにグッと歯をかみしめた。
「貴様の言う事など、素直に聞く気はない!!」
杖を両手で構えると、クリスは全神経を研ぎ澄ました。体の中が燃えるように熱い。まるで血液が沸騰しているみたいだ。これなら大丈夫だ!クリスは召喚の杖をかまえた。
「灼熱の炎を纏いし紅の巨人よ!古より伝わりし血の盟約において汝に命ず、出でよサラマンダー!!」
クリスの足元に赤い魔方陣が出現したかと思うと、杖の先からまばゆい光があふれだした。その光に一瞬目がくらみ、再び目を開けると――そこには燃え盛る炎の様に真っ赤な長髪で、上半身は筋肉に覆われ、下半身はヘビの様なとぐろを巻いた大男が佇んでいた。