第23章 【最悪のバレンタイン】
しかし談話室にハリーの姿はなく、杖から黒い煙をシューシュー出しているロンと、昼間『愛のキューピット』がハリーに向けて歌っていた歌を、フレッドとジョージが歌っているだけだった。クリスはロンに尋ねた。
「あれ?ハリーは?」
「さあね、もう自分の部屋に戻ったみたいだよ」
「もう?早いな」
いつもならそこら辺に座って、何も書かれていないリドルの日記をぺラペラめくっているのに。まあフレッドとジョージが例の歌を歌っている部屋になんて居たくないだろう。クリスは一旦自分の部屋に戻って読みかけの本を取って来ると、ふかふかのソファーに座りながら本を読み始めた。
「何読んでるの?」
「『怪物大百科』もしかしたら、例の部屋に隠された怪物が載ってるかもしれないだろ?」
「そんなのに載ってるわけないだろう!?伝説の生き物なんだからさ」
「ふ~ん。あ、でもこれ見てみろロン~♪」
口の端をニヤリと持ち上げながら、クリスは巨大蜘蛛が載っているページをロンに見せつけた。
「うわぁ!!やめろよ!!本当に嫌いなんだから!!!」
「そう怒るなよ、ジョーク、ジョーク」
「君の弱みを見つけた時、僕も同じ事してやる!」
「さて、私の弱みなんて見つかるかな~?」
そんなやり取りをしていると、ハリーが階段を転げ落ちるように降りてきた。息を弾ませ、冷や汗までかいている。
「どうしたんだよハリー、そんなに慌てて」
「……ハグリッドだったんだ」
「え?」
ハリーはロンとクリスの服を引っ張ると、部屋の隅にまで引っ張って行った。そして唐突に信じられない言葉を口にした。
「ハグリッドだったんだよ!50年前、『秘密の部屋』の扉を開けたのはハグリッドだったんだ!!」