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ハリー・ポッターと純血の守護者

第3章 【常闇のノクターン】


 古美術商にとって、鑑定はなくてはならない技能である。クラウスは最後の品を箱に戻すと、肩で息をつきながら肘掛け椅子に身を沈めた。
 流石に魔法界を代表する名門マルフォイ家だけあって、所有する美術品の数も多い。しかしこれでもまだ一部だけで、ほとんどは屋敷の隠し部屋にあるというのだ。分類のために記していた羊皮紙も、いつの間にか机からはみ出すほど長くなっている。
 ルシウスはそのかき終えたばかりのリストに目を通した。

「ご苦労だったな。それで、これらは全て引き取ってもらえるのか?」
「いや、全部は無理だな。専門外のものもあるが……中には“厄介”な物もある。引き取ったら今度はこちらが魔法省に睨まれる」

 純血主義者の中に、闇の魔法に魅せられ呪いや曰く付きの品物を持っている者は決して少なくない。それらを一種のステイタスとして所持しているだけの者もいれば、実際に呪いや猛毒の含まれたそれをわざとマグルの手に渡るようにし、何人ものマグルを殺した魔法使いもいる。
 そこで魔法省はそういった品を持っていそうな家に、何年かに1度立ち入り検査を行うようになったのだが、それがルシウスの癪の種になっていた。

「是が非でも手放したいと言うなら、ボージンに買い取らせるといい。恐らく喜んで買い取るぞ」
「フンッ、魔法省が無駄な視察などしなければ、私とてむざむざ手放しなどしない。また今回も我が屋敷にあの連中が足を踏み入れると考えただけで虫唾が走るほどだ。特にあの恥曝しのウィーズリーが裏で手を引いているとなると――」
「しかし、お陰で私は依頼が増える」

 今回のような一斉検査でもない限り、古美術品を手放そうとするコレクターなど早々出てこない。また長い間地下に保管されていた品物の中に、魔法省の眼に止まったら不味い物はないかと鑑定させる人も出てくるので、古美術商としては絶好の稼ぎ時になる。
 ルシウスは鋭い視線をクラウスに向けた。

「お前まであの恥曝しの肩を持つつもりか?近頃のクリスと言い、一体どういうつもりだ!」
「そう熱くなるなルシウス。視点を変えろ、そうすれば不利が有利に働くやもしれん」
「こちらの不利を有利にだと?……いや待てよ……フフフ、そうか、その手があったか」
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