第21章 【秘密の部屋】
「クリス?お前、どうして……」
「えっと、その、あの、これはですね……絵を、そう!チャンドラーから、母様の絵は父様が描いていると聞いて、その、1枚くらい、余ってないかな~なんて……」
苦しい言い訳をなんとか通そうと、クリスは必死だった。たらたら冷や汗を流していると、父は数多く並んでいる図書の中から、1冊のスケッチブックを取り出した。
「ほら、これだ。持っていきなさい」
「えっ!?」
「探していたんだろう?レイチェルを描いたスケッチブックだ。と言っても、全て彼女を描いたわけではないがな」
「い、良いんですか?こんな大切なもの貰ってしまって」
「良いんだ。その方が、絵も喜ぶ」
そうまで言われてしまっては、貰わないわけにはいかない。クリスはスケッチブックを貰うと、おずおずと部屋を出て行った。そして自分の部屋に戻ると、1ページ1ページゆっくりとページを開いた。その中には風景画だったり、母の表情だけを集めたページだったり、間近で母の顔を描いたページだったり色々だったが、そこには父の青春が記されていた。
「って言うか、母様から父様を口説いたんだ」
確かにそうでもしなければ、あの父が女性に心を許すわけがない。何だかまたあの2人の恥ずかしいシーンを思い出してしまって、クリスはその夜何度も寝返りを打ちながら中々眠れずにいた。