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ハリー・ポッターと純血の守護者

第16章 【小さな大冒険】


「ダイアゴン横丁!」

 エメラルド・グリーンの炎とともに、子供特有の高い声が漏れ鍋に響いた。小汚い古いパブだったが、以外に客は多く皆雑談に夢中で誰もクリスが入ってきた事に気がついていない。クリスはそれをいい事に、四つんばいになるとカウンターから見えない様に店内を横切り、扉が開くのを待った。
 どれくらい時間がたっただろう。クリスは息を殺しながらひっそりと扉の近くに姿を隠した。まだ小さいクリスの体はテーブルやイスに紛れて誰にも分からないはずだ。クリスが緊張を抑えるように深呼吸をしていると、カランと戸口のベルが鳴って、誰かが入ってきた。
 今だ!クリスはその人の横をするりと抜けると、誰にも追いつかれないうちに走って大通りまで出た。

「やったー!大成功!!」

 燦々と輝く太陽の下で、クリスはうーんと腕を伸ばした。やっぱりダイアゴン横町も良いけれど、こちらの方が自分の空気にあっている気がする。クリスはきょろきょろと辺りを見回すと、何処に行く当てもなく歩き始めた。楽しそうに聞こえる人々の雑踏。憧れの車やバイクの音。何処からか漂って来る美味しそうな匂い。それぞれを堪能しながら、クリスの気ままな散歩は続く。
 ふと、クリスは大きな公園にたどり着いた。緑の芝生の上では、親子が一緒になってサンドウィッチを食べたり、犬の散歩をしている老人がいたり、ベンチに座って本を読んでいる学生も見かけた。それら全てが、クリスの中ではキラキラと輝く夢のような光景に見えた。

(ああ、やっぱりマグルの世界は良い!!)

 クリスは半分踊りながら公園の中を散策した。雑木林の中に入ると、心地よい木陰が太陽を遮っていて、クリスはその清々しい空気を目いっぱい吸い込んだ。やはり家の周りを取り囲む鬱蒼と茂った森とは空気が違う。クリスがしばし森林浴を楽しんでいると、突然誰かがクリスの腕を掴んだ。

「見ーつけたっ!!」
「わっ!」

 驚いて振り返ると、そこには自分と同い年くらいの少年がクリスの腕をがっちりと握っていた。まったりとした空気からは一転、心臓が飛び出しそうなほど驚いたクリスは一瞬にして硬直した。

「あれ?違った。お前だれだ?」
「だっだっだっだれって――」
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