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ハリー・ポッターと純血の守護者

第15章 【ゴムゴムの腕】


 そうすれば、朝目が覚めたハリーが、一番先に自分のところに来てくれると思ったのだろう。コリンは小さな体をより小さくしながら、体をもじもじさせた。なんと安直なんだろうと、呆れたクリスは深いため息を吐いた。

「無駄だ、止めておけ。お前じゃ見回りの先生に見つかって減点されるのが落ちだ」
「でも、この機会を逃したら、もうハリーと仲良くなれないかもしれないし」
「ハリーはな、何も知らないのに英雄扱いされるのが嫌いなんだよ。特別扱いすればするほど遠のくだけだ」

 そうだ、ハリーはいつだって記憶すらない過去の栄光ではなく、自分自身を見てくれる人を好んだ。そのおかげで去年クリスは、ハリーに口もきいてもらえないほど喧嘩をした事がある。しかしこれだけは口で諭しても分からないだろう。クリスはコリンの中にかつての自分の影を見た。

「僕……昔から何の取り柄もなくて、だからハリーの話を聞いたときは、本当にこんなすごい人いるんだって胸がドキドキして……どうしても、友達になりたくて――」
「――行って来い」
「えっ……?」
「聞こえなかったのか?そんなに行きたければ行けば良い。だが見つかって減点されても責任はお前にあるんだからな」

 そうだ、行けば良い。行って、ハリーから説教でも食らうといい。そうすればコリンの目も少しは覚めるだろう。何事もぶち当たってみなければ分からない事もある。クリスは寮の点数など気にしていないし、見つかって50点減点されて皆から冷たくされようが、本人の勝手だ。
 クリスが促すように道をあけると、コリンの顔がぱあぁーと明るくなった。

「合言葉は覚えてるだろうな?」
「うん!僕、行ってくるよ」

 まるで初めての冒険に胸をときめかせる少年のように、コリンは『太った婦人』の穴を押し開けた。その後姿を見送った後、また誰もいなくなった談話室に静寂が戻った。
 クリスは再び机に向かうと、残ったレポートを仕上げようと羽ペンを走らせた。だが退屈な魔法史のレポートがだんだん睡魔の様にクリスを襲い始めてきて、パチパチと暖炉の炎が燃える中、安心しきったクリスはそのまま夢の中へ落ちていった。
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