第2章 図書室ではお静かに/uszw
きっかけは忘れたけど、放課後はいつも二人で図書室で勉強するのが日課。
いや正しくは勉強を教えてもらう、かな。
と言ってもずっと勉強なんてするわけなくて、
隣で本を読んだり、課題をやってるうっしーの邪魔をするのがほとんどだったりする。
そんなことをするもんだから、自然と声が出ちゃったり、笑っちゃったりして、よく図書委員に注意される。
そうやって昨日も怒られたばかり。
「おい、つばさ、今日はちゃんと静かにしろよ?」
「はーい。」
「図書委員の橘さんなんかは、特に目の敵にしてるから。」
橘さん…?
あぁ、あの黒髪が綺麗な美人さんか。
そういや何度か注意されたなぁ。
「次、注意されたら出禁だぜ?」
と言いながら机の前にある衝立から覗くように遠くを見るうっしー。
つられて視線の先を見ると、カウンターには噂の人物、橘さんがいる。
「俺、嫌われたくねぇし。」
その言葉に私の脳内センサーが反応する。
『嫌われる→注意されやすくなる→出禁になる→橘さんに会えない』
ははー、なるほど。
うっしーってば橘さんのことを好きだったのかぁ。
今までそんな素振り全く見せなかったのに。
ニヤっと笑ってうっしーの耳元に口を近付ける。
「橘さん、彼氏いるかどうか聞いてきてあげよっか。」
「はぁ?」
うっしーは意味がわからないとでも言いたげな顔をして、眉をひそめる。
「好きなタイプとか…あ、誕生日とか知りたいよね?
てかもう連絡先とか聞いちゃう?」
「バカっ、お前…声デカイ…!」
うっしーは焦りながら私と橘さんを交互に見てる。
そんなことをお構いなしに、うっしーと橘さんをどうやってくっ付けるかで頭の中はいっぱいで。
「あ、そうだ!橘さん呼んでこよう!
もう直接話した方が早いよ!」
「っ!お前っ…!!」
ぐいっと引き寄せられる後頭部。
次の瞬間には重なる唇。
はむっと私の唇を挟むと、
私の言葉を飲み込むように唇が動き、離れる。
「少し黙れよ。」
「……は、はい…。」
何事もなかったかのように課題を始めるうっしー。
固まる私。
図書室は静かになったけど、
私の心臓はうるさいほど激しく体中に鳴り響く…。
☆☆☆☆☆
「出禁になったら、つばさに会う口実がなくなるだろうが。
んなこともわかんねぇの?」