第7章 マイガール A×N
世間的に12月24日といえば、クリスマスイブなわけで。
だけど俺的には、俺“相葉雅紀”の誕生日なわけで。
「誕生日おめでとう」
そう言ってくれるのは、幼なじみのアイツくらいだ。
『もしもし、まーくん?』
「あ、うん。俺だけど」
『そりゃそうでしょうよ。あなたにかけてるんですから』
「うん、そうだよね」
毎年電話をくれる幼なじみ、二宮和也。
今年もまた電話をくれた。
『まーくん、お誕生日おめでとう』
「ありがとう、カズ」
『じゃあまた…1年後ね』
「うん、本当にありがとう。電話、嬉しかった」
『そう?じゃあね…』
「うん、じゃあ…」
そうして5秒数えて電話を切る。
はぁ…。
あの時、俺が素直になってたら…なんて後悔してももう遅いのかな。
5年前の俺の誕生日。
カズから告白された。
ずっと好きだったって。
俺もカズのこと好きだったけど…
男同士っていうのもあって素直になれなくて。
“友達以上に思えない”
…そう言ってしまったんだ。
「変なこと言ってごめんね」って泣き始めたカズを、抱きしめることもできなかった。
それから数日後に、まさかカズが離れていくなんて。
“まーくんの傍にいるとつらいよ…好きなんだもん”
カズは遠く離れた所に転職してしまった。
隣にある実家からも出て行ってしまった。
今さらかもしれないけど…俺の本当の気持ちを伝えたらどうなるかな…。
電話をくれるってことは、まだ俺のこと好きでいてくれてるのかな…。
なんて、そんな都合のいいこと考えたらダメだよね。
「カズ…カズ…カズ…」
会いたいけど叶わないから…
俺はまた、1年後を楽しみにすることにするよ。
クリスマスイブじゃなくて、自分の誕生日をね。
思い出に浸りながらベッドに横になっていると、
「まーくん」
どこからか、カズの声が聞こえた気がした。
俺は飛び起きて、部屋の窓から外を見てみる。
カズの部屋は電気は消えてるけど、カーテンが少し揺れていた。
部屋の主は…カズはいるはずがないのに。
まさか…ね。
俺は家を飛び出し、隣の二宮家のインターホンを押した。
「あのっ、あのっ。和也くんいますか?」
しばらくして
「まーくん…」
薄く開いた玄関のドアから…
大好きなカズの声がした。
END