rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第34章 wrong step on the stairs8
「別にどうってことねえよ……オレ様が一度や二度抜けたくらいで、影響なんて出ねえさ。知ってるだろうが……頭のキレる、ウチのガードが誰だかよ」
「っ……」
「……まさか心配してくれてんのか?」
「ッ……そんな…、!ん……」
「止めたのがおまえでも、オレは好きで残ったんだ……おまえと居たかったんだからよ」
起きて声をかけた瞬間、また襲われるかもしれないと一瞬思った。
それがシルバーのデフォルトと言っても過言ではなかったから……。
が、シルバーは名無しの起きしな、軽く頭を撫でるだけだった。
僅かな寝落ちでも寝癖のついてしまった髪の話題に触れるのみで、連絡云々の件があるにせよ、わざわざ性的な流れにこの場が運ばれることは珍しくなかった。
それはあまりにも意外であり、ほんの僅か、名無しがシルバーに理性を感じてしまった瞬間でもあった。
「……」
「……名無し…?……!お……」
そのときふと、抱かれている最中、とろんとした意識と快楽の中で言われた言葉が名無しの頭を占める。
分かっているのだ……身体がシルバーを覚え、下半身はシルバーのそれに馴染むように成され、彼を求めているのは自分の方なのかもしれないということ。
いつのまにか逆転したその図式をもしも悟られでもしたら、彼は本当に自分を棄てるかもしれない。
ナッシュに冷やかされた憂さを忘れさせて欲しかった流れの続きもあったゆえ、いま名無しが欲しかったのはシルバーの身体だ。
そんなどさくさに紛れて、心まで……なんて、言えたものじゃない。
建前は――。
「っと……、チッ…電話かよ…」