第14章 『可愛い』
「おう、いいぞ。どっか行くか」
「は、はいっ!!」
ぱあっ!と瞳を輝かせて喜ぶヒカリ。
「・・・いや、待てよ。確か明日は用事があったんだよなー」
「えぇ?!・・・あ、はい・・・じゃあ、仕方ないですよね・・・・・・」
今度は、しゅんという文字が見えてきそうなほどに落ち込み肩を落とすヒカリ。本当にこいつは何を考えているのかわかりやすい。
「あ、でも用事来週だったわ」
「ほ、ほんとですか?!!」
そして、俺の言葉ひとつで今度はまた飛び上がりそうに喜ぶヒカリ。
・・・ああ、もうダメだ。我慢してたけどもう無理だ。
「はははははっ!!!」
「え?え?!そ、宗介さん?!」
耐え切れなくて、俺は大声を出して笑ってしまった。事態の飲み込めないヒカリは目を丸くして驚いている。その様子も俺の笑いを誘う。
「っはは!・・・あー、面白え・・・ほんっとお前って表情ころころ変わるよな」
「え?あ、あの、もしかして・・・」
「ああ。用事があるってのは全部嘘だ」
「えっと、じゃあデートできるってことですね?やったぁ!・・・じゃなくって!!また、私のことからかってたんですね?!」
やっとのことでからかわれていたことに気付いたヒカリは頬をふくらませて怒りだした。
・・・気付くのおせーよ。ほんっとこいつは・・・
「あーわるいわるい。まあそう怒るなって」
「怒りますよ!もう、いつもいつも私で遊んで!!」
「はっ!だってしょうがねえよ、お前、ホント可愛いからよ」
「・・・・・・」
「まあ、機嫌なおせ。明日はお前の行きたいとこ、連れてってやるから。詳しいことは後で電話・・・・・・おい、どうしたヒカリ」
さっきまで怒っていたヒカリはなぜか急にぴたりと動きを止めた。その頬はピンク色に染まっていて、まるで夢でもみてるようなぽわんとした表情で俺をじっと見ている。
「あの・・・今、『可愛い』って・・・」
「は?」
「宗介さん、今、私のこと『可愛い』って・・・」
・・・やばい。しまった。まずい。知らないうちに口に出てた。