第14章 『可愛い』
さっきまで鮫柄のプールでは、岩鳶との合同練習が行われていた。俺も泳ぎはしないが、他の奴らの泳ぎを見てやってアドバイスしたりと、練習には参加していた。
練習が終わり、片付けなんかが終わると、ヒカリが俺の方に嬉しそうに寄ってきた。
「宗介さんっ!お疲れ様です!」
「おう、お疲れ」
ヒカリの様子が、嬉しそうにしっぽを振っている犬っころのようで、笑いそうになったが、それを言ったら怒らせるので普通に返しておいた。
「あのっ!これから毎週こちらで練習させてもらえるみたいです!」
「おお、そうか」
「はい、うちは屋外プールしかないから、この時期は本当に助かります。それに・・・」
「それに?」
ヒカリの頬が少しだけ染まる。それだけでなんとなく次に言うことが予想できるが、あえて続きを促してみる。
「それに・・・宗介さんにも会えるし!・・・ふふ」
「別に・・・練習関係なくいつも会ってんだろ」
予想通りの答えがヒカリの笑顔と一緒に返ってくる。こいつのこんな素直な反応が可愛い・・・といつも思っているんだが、そんなことを声に出して言うはずもなく、素っ気なく答えておいた。
「あはは、そうですよね。でも・・・練習の時、たまに宗介さんと目が合って、笑ってくれるととっても嬉しいので・・・」
「・・・そうかよ」
練習中は必要がなければ俺達はあまり話さないようにしている。それでもやはりお互い意識しているからか、よく目が合う。そんな時少し笑ってやると、ヒカリも嬉しそうに頬を染めながら、笑い返してくれた。
「あのっ!あとですね!」
「なんだよ」
・・・ホントにこいつは色々せわしない奴だと思う。
「さっき、明日は鮫柄、練習お休みだって、凛さんが言ってました。あの・・・じ、実は、うちもお休みなんですよね、練習」
「そうなのか」
そして、こいつが今何を言いたいのかもまた予想がついてしまう。
「えっと・・・も、もし宗介さんがお暇でしたら・・・い、いっしょにどこかに出かけたいなーなんて・・・」
期待に満ちた目をしてヒカリが俺を見上げてくる。
こんな顔をしてるヒカリを見ると、俺はどうしてもからかってやりたくなっちまう。