第12章 嵐の文化祭 その5
「俺も・・・」
私の話を聞いた後、少し考えるような表情になって黙ってしまって、やっと宗介さんは口を開いた。
「後から思い出してみて、あの発言はなかったって反省した・・・」
「・・・」
「あの時、ヒカリが『もういい』とか言い出すから・・・俺から離れて行っちまいそうな気がして・・・焦って変なこと言った・・・ごめん」
しっかりと私の目を見て、宗介さんは謝ってくれた。
「別に・・・お前とのこと、軽々しく思ってるわけじゃねえから・・・それはわかってほしい」
「・・・は、はい」
急に宗介さんの顔が、いつもの宗介さんじゃなくなってしまったように感じられて鼓動が速くなった。目を見て答えたいのに、なぜか恥ずかしくて俯きながら私は答えた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらくの間、沈黙が続く。無理もない。だって、こんな話題の後だし。自分から言い出したのに、いたたまれなくなってしまう。
・・・ダメだ、こんなことじゃ。まだ話さなきゃいけないことはたくさんある。しっかりしなきゃ。
頭を整理して、もう一度私は口を開く。
「あ、あとっ!・・・っ・・・い、今、宗介さんに聞いた話もショック、でした・・・・・・」
「・・・」
「もう昔のことだし、どうやっても変えられない事実だって頭ではわかってるのに・・・やっぱり、宗介さんの口から聞いてしまうと・・・ショックです・・・」
「ああ・・・」
宗介さんもとてもつらそうな顔をして私の話を聞いている。宗介さんにこんな顔させたくない。
でも・・・『言いたいことはちゃんと言え』って、つきあい始めたばっかりの時に宗介さんに言われた。自分の気持ちを隠したままじゃダメなんだ。
「か、身体だけの関係だって言われても・・・やっぱり・・・宗介さんがあの人に触れたんだって思うと・・・苦しい・・・です・・・」
「・・・・・・」
言葉に出してはっきりと言うと、さらに苦しさが増した。宗介さんがどんな風にあの人に触れたんだろうとか、想像するだけで頭がおかしくなってしまいそうだ。