第12章 嵐の文化祭 その5
宗介さんは少し言葉を選ぶように間を置くと、ポツリと言った。
「・・・・・・まあ、セフレみたいな感じだな」
「・・・セフレ?・・・って?」
聞いたことのない言葉に思わず聞き返してしまう。
「あー・・・まあ・・・身体だけの関係、ってことだ」
「あ!ああ!そ、そうでしたか!」
宗介さんから返ってきた答えに、声が上擦って頬が熱くなるのを感じる。
「・・・会えば抱いて・・・抱いて抱いて・・・その時だけは少し辛さを忘れられる気がした・・・」
宗介さんが語っていることが、まるで遠い国の言葉みたいに感じられる。あまりに私の日常とはかけ離れていて、すぐには理解が追いつかない。
「・・・あ、あのっ!」
「・・・なんだ?」
でもやっぱりこれだけは気になる。私は思い切って宗介さんに聞いてみることにした。
「そ、そんな関係で、あの女の人は・・・良かったんでしょうか?」
・・・そうだ。私だったら絶対に嫌だ。心がないのに、そんなことばかりされたって・・・
「はっ・・・まあ、あいつもそういうのが目当てで俺に声かけたようなもんだったしな。お互い目的が一致してたっつーか・・・」
・・・さらりと宗介さんが返してくる。あまりに考え方が大人すぎて、急にはついていけない。でも・・・そんな身体だけの関係だった、とは言っても・・・『あいつ』、その響きに少しだけ懐かしさみたいなのが込められてる気がして、心が苦しくなった。
「・・・まあ、そんな感じであいつとはしばらく続いてたんだけどな・・・お前に話したろ?去年の夏、岩鳶のリレーを見てまた凛と泳ぎたいって思ったって」
・・・そう。これも宗介さんが地方大会の後で私に話して聞かせてくれたことだ。遙先輩達と凛さんのリレーを見て、新しい夢が生まれたんだって宗介さんは言ってた。
「・・・それで俺もこんなことしてる場合じゃねえなって・・・あいつとの関係を終わらせたんだ」
「え、えっと・・・そんなにすんなりと別れられるもの・・・なんでしょうか?」
宗介さんはあっさりと言ったけれども、私には信じられない。宗介さんはそれでよくっても、あの女の人が納得できないんじゃ・・・