第4章 ジンベエザメの試練 ふたたび
そのままの体勢で俺達は30分ぐらい映画を観続けた。たまにヒカリがカップケーキを取って、俺に食わしてくれたりなんかして。
だが、最初の方で自分を落ち着かせるためにコーヒーを飲み過ぎたからか、少しトイレに行きたくなってきた。ヒカリには悪いが、映画がいいところに差しかかる前に行ってしまったほうがいいかもしれない。
「ヒカリ。わりぃ、俺トイレ借りるわ」
「あ、はい。そこのドアを出てすぐです。待って下さい、今どきますから」
「あ、いい。お前そのまんまで、俺が・・・」
俺が、うまいこと脚を持ち上げて抜ければ、ヒカリはそのままでいいと思ったんだ、その時は。だけど、ヒカリが立ち上がるのと、俺が脚を持ち上げるのが絶妙なタイミングで組み合わさって、俺はヒカリの足に躓いて、そのまま倒れ込んでしまった。
「う、お!!」
「え?!きゃぁ!!」
危ないと思って反射的に目を閉じた。
「・・・わり、大丈夫か・・・!」
「・・・あ、はい・・・!」
次に目を開けた瞬間に、頭の中が真っ白になった。俺のすぐ目の前にヒカリの顔があった。端的に言うと、俺はヒカリをソファーの上に押し倒してしまっていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
謝ってすぐに起き上がればいいだけなのに、なぜか身体が動かない。ヒカリも何も言わない。
「・・・・・・」
「・・・・・・!」
ヒカリがぎゅっと目を閉じた。
・・・何やってんだよお前・・・ガキのくせに。
どういうつもりで目、閉じたんだよ。お前なんか『あはは、重いですよ、宗介さん。早くどいてください』とか言ってればいいのに。そうしたら俺も笑ってすぐにどいてやったのに。
「・・・・・・」
「・・・・・・んん」
ヒカリの柔らかい唇に一度だけ自分の唇を落とす。それだけでヒカリの頬が一気にピンク色に染まった。たまらず、2回、3回と軽いキスを繰り返す。
「ん・・・ふっ・・・んん・・・」
その度に甘い吐息がヒカリの口から漏れる。
もうそろそろやめないといけない。そうしないと歯止めが効かなくなる。